BREATHLESS  V
   〜The blood soak through soil〜




愛しい人のその命ともいえたそれに赤く染まった少女。
ためらいを消すことも出来ずに・・・・でも、それでも戦う少年。

・・・・・もう、生きることにウツロウ少年・・・・・。




「チッまだ追ってきやがる!」
「何で貴方はっ、・・ぼくらを・・・。」
「たくさんの血が流れていた。もう戦いも終結に向かうだろうっ!それを見ずに死にたかったのか!?」

駆け抜ける。
生きるために。

背後から迫る人は、銃を乱発しながら追いすがり、罵声を飛ばす。
鉛球は地をえぐり、恐怖心を駆り立てる。
ミリアリアは、しゃがみこんでしまいそうになる恐怖心と戦いながら走っていた。
二人は自分に合わせて走ってくれているから・・・・。
それがわかるから、今止まるわけには行かなかった。

例え、助けてくれたその人が、ザフトの人間であっても・・・。


「しょうがない、お前ら、もう少し速く走れるな!」

断定的な言葉で、イザークは二人に確認を取る。

「できる」

そう言って、走る。
イザークは最後尾につくと、何かを取り出し、後ろへと投げつけた。
それは・・・

 ドォン・・・

鈍い爆発音。
その一瞬前に、岩の陰へと四人隠れた。

真横を駆け抜けた風に、その衝撃の強さを実感する。
しかし、その威力にほおけている時間もない。
突風がすぎると、すぐに岩陰から出た。

「きゃあ!!?」
「ミリアリア??!」
「どうした!」

岩場から先に出たミリィがあげた悲鳴に、二人はそこから急いで出た。
そして、気が付く。
そこに居る人影に・・・。

「・・アスラン・・・。」
「え?」
「・・・アス・・・ラン・・・」

その人影は、イザークの暴走に、後を追ってきたアスランであった。

「まったく、何をしてるんだ。」
「お前こそ、何で居る!?」
「連帯責任になるようなことはごめんでね。」

そう言って、鋭く後方を見やった。

「・・・・・」
「君たち、走れるな・・・・!!」

冷たく輝くといった形容のままに生きているようなその少年は、信じられないといったように、目を見開いた。
しかし、それは一瞬の出来事。
誰も気付かないまま・・・いや、イザークと、虚ろなキラは気付いたかもしれないが、二人はそのまま、アスランの言葉に頷いた。

「イザークはもうほとんど装備が尽きているだろう?先に行け。俺が最後尾で、やつらの牽制しといてやる。」

そう言い放ち、全員に走るよう促した。

その横顔が嬉々としたものだったことに、気付くことが出来たのは、多分・・・

”自分”が分からないまま、キラはミリアリア・サイの二人に連れられて、岩場を駆け抜ける。
後方からの殺気に、回りは急かされている。
飛び交う鉛球は、当たらずに此処まで来たが、その運もいつまでかも、わからない。
「きゃっ」
そんな中、ミリアリアは勢いよく転倒した。

「ミリィ?!」
「大丈夫!まだ走れる!」

少女の気丈なその様子に、イザーク・サイの両名は気付く事はなかった、その足から流れる赤い存在に・・・。
それをキラは、只見るともなしに眺めていた。

流れ、同化する赤。
それは彼女の命のそれ。



走る。
走る。
なぜ走るのかも分からないまま
自分すらわからないまま
駆け抜ける。
唯、銀色に輝くその姿を追って・・・
人の命ともいえる血を飲み込んで、更に赤く赤く染まったかのような地を・・・。