それでも平和な僕らの日常 2
「キラー、こっちー。」
教室内をきょろきょろと歩くキラに、ミリアリアが声をかける。
この学校は、かなり規模が大きく、そのためか、週に一度、500人ほどの人数で授業をする日がある。
丁度今日の授業はそれで、教室が広すぎるため、人を探すにも一苦労なのだ。
「あ、ミリィ。良かった、全然見つからないから焦っちゃった。」
「この教室、無駄に広いものね。」
「やだ、キラじゃない。久しぶり―。」
穏やかな空気の中、背後からキャイキャイとした声がかかった。
振り返ると、案の定、フレイ・サイの両名が立っていた。
「おはよう、二人とも。」
「おはようキラ。なあ、今日の宿題やってきたか?」
「・・・宿題?あったっけ、そんなの。」
「何言ってんの、先生教科書2・3ページ分の問題に、プリントまでつけてくれちゃって、すごいたくさんあったじゃない。」
あきれたような、フレイの声。
「「・・・・・・」」
キラのボケボケ・・・というより、いい加減なその反応に、2人は反応無く佇む。
そんな折に後ろからまた呆れ声。
「相変わらずいい加減なやつだな。」
「アスラン。」
「おはよう、アスラン。・・・・なあ、キラっていつもこう?」
「いつもだよ。宿題は大抵其の日の内にやって、其の日の内にそれがあったことすら忘れてるんだ。ほら、ノート。折角やった宿題忘れてどうするよ。」
「ああ、ありがとう。」
そう言うと、ペラリ、とページをめくり、そう言えばやったなこんなのも。と呟いた。
其の行動は、余りにも自然体で・・・・・いつも届けてるのか?と全員が思うほどだった。
ただ、一番の驚くべき点は、この量の宿題を一日で終らせたというところかもしれない。
「皆何やってんだ?そんなとこに突っ立って。」
そんな折、トールもようやく表れて、もう授業始まるぞ。と、声をかけた。
それを合図に6人はそれぞれいつものように、席についた。
窓際から、フレイ・サイ・アスラン・キラ・トール・ミリアリアの順で座り、準備しているところへ、思わぬ声が入った。
「へー、あんたも居たんだ。」
興味があるのか無いのか分からない声。
やる気も何もなさそうな、気だるげな雰囲気をまとう少年が通路に立っていた。
「あ!きみ確か、シャニ?シャニ・アンドラス?」
「そう」
「ね、此処座らない?一緒に座る人がいないなら。・・・あ、それとも、他の二人と一緒?」
「別に」
「また、話がしてみたいなぁって思ってたんだ。だめかな?」
またって・・・シャニは話などしたか?と思ったが、すぐにどうでも良くなり考えるのをやめる。
「・・・別に」
「本当?トール、此処いいよね?」
「あ、ああ・・・」
それまで事の成り行きを見守りながら、3人は冷や汗を流していた。
もちろん、其の3人とは、サイ・トール・ミリィのことである。
ナチュラルの間でも、あの編入生3人は、かなり危険視され、敬遠されている存在だった。
いくらキラでも、そんな和やかに会話などしないでくれというのが本音であろう。
しかし、当のキラも、シャニ・アンドラスも、そんな3人の心理状況など全くもってお構い無しだった。
とはいっても、それを会話・・・と言うのかは定かではないが・・・。
その間、アスランはと言うと、じっとシャニを観察していた。
アスランにとってキラは、ずっと大切に守ってきた幼馴染である。
色々な意味で、警戒されているそいつを、無条件で信用することなど全くもってできるはずも無いことだ。
それに、キラに何かあれば、うるさいのが一名、いるのだ・・・・。
フレイもまた、其の様子を、じっと観察していた。
会話が一段落した頃、チャイムが鳴り、冷や汗を流す3人はいそいそと授業に取り組んでいった。
「ん?シャニはどーしたんだよ。」
「知るか、俺が。」
「さぼりか?まあ、別に僕には関係に無いことだけどね。」
クロト・オルガの両名は、相変わらず回りに誰もいない後ろの方の席に座って、どうでも良さそうに会話したのち、自分たちのすることに没頭した。
「キラってば、あいつといつの間に親しくなったのよ」
「?いつって?まだ、一回しか話したこと無いよ?」
「えー信じらんなーい。なのになんであんなに普通に喋れるのー?」
「「「・・・・」」」
率直なフレイと、キラの会話を聞きながら、少々げんなりする3人。
もう、シャニ・アンドラスのことはいわなくていいよ。と、誰もが言いたくなったひととき。
「でも、結構話しやすいと思うよ?」
(それはキラだけだ)
キラの台詞に胸中で、ツッコミを入れつつ、それぞれは帰路へ立った。