それでも平和な僕らの日常  4






噂ってアスランは結構馬鹿にするんだけど、僕はそう、ばかにしたものだとは思わない。
まあ、うわさをされる方としては、気にするのもばかばかしいのかもしれないけど・・・。



 はあはあ・・はあ・・・は・・・
上がる息を整えて、僕は扉を開けた。

 ばたんっ

「カガリ!!」

思ったより勢いよく開いたドアなんか気にならないくらい、僕は焦っていた。
だって、だって・・・・

「キラ?!驚いた。どうしたん・・だ・・・・って、愚問か。もう、おまえの耳に入ったのか。」

早いな。と呟き、周りの者に退室を命じた。

「入ったのか、じゃないよ・・・。一体どういうこと?オーブは!カガリは!」
「まあ、落ち着けよ、キラ。」
「落ち着けっていわれても・・・。」
「ひとつずつ教えてやるから。な?」
「うん。」

キラは深呼吸し、カガリと隣り合わせて座る。

「聴いたのか?」

誰から?と目で問い掛けた。

「噂で・・・小耳に挟んだ。ねえ、オーブも参加することになったって・・・・どういうことさ?」
「うん、オーブが参加ってことは、オーブを自国とする者の中から、ナチュラル・コーディネーター関係なく選手が選別される。
ただし、それは親がそこに籍があるからって理由じゃなくて・・・。
そうだな、お前みたいに自分の意志で、本当の意味でオーブの国民であるやつのみだけどな。」
「・・・それって、かなり大変じゃないの?」
「大変だな。」

これまで、この模擬戦で決まる物は、ナチュラルと、コーディネーターの優位性。
だが、此処でオーブが出るとなると・・・。

「このことが、少しでもニ種間の溝が狭まるきっかけと・・・・なればいいのだが・・・。」
「戦いが、幸福を呼ぶとは思えないよ。」
「・・・・分かっているさ。わかっては・・・いるんだ・・・。」

弱くなる声。

知っている。
カガリだって、戦ったり、そういうものでしかどうこうできないこの現状にいらだっているのだから。


「それともう一つ。君も出るってほんと?」
「え・・・あ・・・・それは〜。」
「ほんとなんだね。」

溜め息が出る。
何で出るのか分からない。

「わざわざ君が出なくても・・・ていうか、基本的に男女分けられていたのもを、何でわざわざ一緒にするかなあ?」
「うっ・・・それも、しってたのか・・・?」
「バッチリ聞いちゃいました。」
「だって、オーブのほうが、人数的に色々と無理があるんだ・・・。だから、そうでもしないと・・!」
「あ〜、もう。」

頭を抱えたくなる。
カガリの言いたい事は僕にだってわかるさ。

「ごめん・・・。やっぱ怒った?」
「・・・・いいよ、別に。でも、そういうことは勝手に決めないって約束したじゃないか。」
「うぅ・・・ご、ごめんなさい。でも、キラが居ると、絶対に許してくれないか。私が試合に出ないかわりに、承認するとか言いそうだったから!」
「当たり前でしょ?」
「でも・・・、勝手にしたことは謝る。ほんと、ごめん。」

僕らの間の約束。
二人の間に共有した絶対の物。

「もう、今度破ったら、カガリの進めてること全部承認しなおしにするからね!」
「あ、ありがとう、キラ!」

互いにぎゅっと抱きしめあって微笑みあう。


カガリは僕にとって大切な人。
でも、彼女は二番目の大切な人。


僕は、どうすれば良いか、考える。

模擬戦。
大切な、優秀な二人。

ザフトか、オーブか
アスランか、カガリか・・・
僕は二つに一つ、選ばなくてはいけなくなった。



   アスランも、オーブ側の人間だったらよかったのに・・・。