運命
人は時折、其の言葉に打ちのめされ、また、救われる。
運命
其れは、人を枠に押し込める、進化の可能性を消し去ってしまう存在。
もしそれがあるとするなら・・・貴方は何を思いますか?
ラクスが、少年二人を伴って現れ、此処には、キラが居る。
半ば計画通りであり、半ば予想外でもある今の状況。
ウズミ・ナラ・アスハ
父親であり、オーブの主長である其の人が、まさか、直接来るとは思っていなかった事で、少しだけ驚き、また、好都合とも思った。
自分の父親である其の人が、何を思っているのかを知る絶好の機会。
自分と、キラとの関係を作った張本人の言葉を、ただ聞きたい・・・・。
「で、なぜ僕らは呼ばれたんです?ラクス」
歌姫に導かれてきた少年の一人が言葉を発する。
「其れは、これからわかります。だから、まずはカガリさん達の様子を、黙って見ていてくださいな。」
にっこりといわれた言葉は、とても重く、とても逆らいがたかった。
この少女は、こんなに威圧的な何かを持っている人であっただろうか・・・?
「まぁ、アスラン。彼女はこれでも言い出したら聞かない方です。僕らは黙っていた方が良いですよ。」
柔らかい笑みを湛えた青年は、口を開きかけた其の人に、言い諭す。
所詮男は弱いのだからと、小さく呟いた言葉は、他の誰にも聞かれないままに、霧散した。
「さてと、でははじめよう。・・・・と、言いたいところだが・・・」
「まだ役者は揃っておりませんわ。」
「しばらく、此処で雑談でもすることにしましょうか。」
にっこり微笑み、周りを見渡す。
二人の女性は、確実にこの場を支配していた。
「例えば、なぜ此処に呼ばれたのが、アスランとキラだけではないのか・・・とかな。」
にやりと笑えば、特に青い髪の青年と、緑色の癖の強い神の少年は、互いに目を瞬かせ、確かにどうしてだろうといった顔をした。
キラは、どこか何も見ていない瞳で、カガリに一応視線を向け、ウズミはじっと、顔色を変えない。
「其れは、私がお話いたしますわ。」
「ああ、そうだな。ラクスのことだ、本人に任せたほうがいいんだろうな。」
「ええ。単刀直入に言いますと、私と彼、かなり前からずっと、交際を続けていますの。」
「・・・え・・・?」
にーっこり。と笑い、ねぇ?といった視線をニコルに送る。
其の仕草に、一瞬呆気にとられた青年も、少し溜息をこぼし、半ば苦笑交じりで微笑んだ。
其の微笑みは肯定。
誰にも何も言わせない。
彼らの肯定。
ガタン
「・・・」
「お父様?」
其れまであまり表情を作る事の無かったウズミが立ち上がった。
其の瞬間、荒く弾かれた椅子が、音を立て揺れたが、本人はそんな物気にしてなどいない。
気になること、意識が向く事・・・それは・・・・
「交際?」
怪訝そうに、不可解そうに、そして、少しだけ絶望的に、つぶやく。
「はい。そうですわ。」
其のウズミの反応に、それぞれが驚く中、ラクスだけは、にっこりと笑って答える。
「・・・君は・・・それがどういうことか・・・・」
「知りませんわ。誰も語らない事ですもの。そうでしょう?あなた方大人は、何も言うことはないままに、子供に言う事を聞けという。それでは納得行くはずがありませんわ。」
そうでしょう?と、小首を傾げる姿は愛らしい。
しかし、其の存在感は、一介の少女が持つには、特別過ぎる。
「だから、此処にいる。私たちは知るために。」
そして、そんなラクスの言葉を引き継ぎつつ、カガリが席を立ち、ラクスも立ち上がった。
ツカツカと、扉に無造作に近づき、扉を内側へと開いた。
「・・・暴くために。・・・・ようこそ、シーゲル・クライン殿。」
其処には、ラクスの父である、シーゲルの姿と、ラクスそっくりな少女の姿があった。
「・・・!・・・」
「ラクスが、二人!?」
そんなつぶやきが誰ともなしに零れ落ち、そんな心情に呼応するかのように、其の廊下にいる少女は、にっこりと微笑んだ。
優しい微笑を。
「お待ちしておりましたわ。お父様」
「これで役者が揃った。・・・・話してもらいますよ。全て」
「私たちは、このためだけに、此処にいるのですから。」
にっこりと女性らしく、でも、不敵に笑う二人。
何も見えない暗闇でも、真っ直ぐに歩いていく事のできる強さを持った二人。
其の意図を、まだ誰も彼もが、つかむ事はできないまま見ていた。