それでも平和な僕らの日常 22
誰だって持っている物
誰だって知っている物
自分の求める声
其れは恥ずべき事でも何でもないのだ。
だから、求める心のために、私は戦う。
「すまなかった、キラ。いきなりこんな・・」
「だから、良いって。カガリの好きにするといい。僕は、其れを望んでるんだ」
「・・・・」
キラの言葉に、自分がなんともいえない顔をしてしまうのを自覚する。
この気持に、一番近いのはなんだろうか・・・?
驚愕?
悲しみ?
憂い?
痛み?
絶望?
どれも近くて、どれも違う。
きっとたくさんの気持がゴチャマゼになってしまっていてわからないんだろう。
絶対に違うと、君に伝えるんだ。
そのために、私は君といるから。
「キ・・・キラッ・・・」
声を、言葉を絞り出す。
キラの顔は見えない。
というか、見れない。
怖くて、怖くて、見る事ができない。
きっと、どんな顔をしていても、私は泣いてしまうだろうから、俯いたまま、言葉を紡ぐ。
だから、気配だけで察する。
キラが小首をかしげたことを。
「もういいんだ。私のためなんかに、私なんかに、あわせる必要はないんだ。
だから、もう良いんだ。お前は、お前の思うように生きて、行動して、感情を出して。
それで、思うように生きれば良いんだ。
欲しいと思う物を欲して、手に入れようと頑張って、行きたい場所に行って、住みたい場所に住めばいい。
私は、もう、お前をしばりたくない。」
口早にまくし立てて言うだけ言った。
一度でも止まったら、もういえなくなるから。
だから
まるで早口言葉を言う時みたいに、噛まないように、半ば怒鳴るように、まくし立てた。
「其れは・・・もう、君の傍にいなくて良いって事?」
「そうだ」
「じゃあ、もう僕が此処にいる理由はないんだね。」
キラが離れる気配に、とっさに顔を上げる。
「わっ私はっ!キラがキラの思うままに、自由に生きて欲しいんだ。
自分の欲しいと感じたものを、ちゃんと、自分のために欲して、手を伸ばして生きて欲しい。」
キラを真っ直ぐ見据えて、紡いだ言葉は、一番、キラに伝えたかった思い。
其の手に残るものが、貴方が本気で求めたものだったらいいのに・・・・・
彼が、彼の思うままに生きてくれたらいい。
今まで我慢せざるを得なかったあらゆるものを、諦めないで手を伸ばして欲しい。
君を思う。
自分のせいで、たくさんのものを手放してきた君。
ラクスが見せてくれた、本当。
自分の見ていなかった視点の君。
「わかった・・・今までありがとう。カガリ」
そう言って消えた背中に、涙が溢れた。
どうしようもない切なさで溢れかえった心。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を伏せて、うずくまった。
知ってしまった真実は、なんて重く痛いのだろう?
でも、それ以上に、彼に幸せになってもらいたいという思いから、こんな風にしか出来なかった。
なのに、其れなのに、こんなにも今の自分は支えを必要としている。
崩れ落ちそうだ。
不安になる。
これからの事。
二人だったから、こんなに怖くなかった。
二人だったから、たくさんの事をやっていけれた。
これからは一人。
ずっと、ずっと・・・。
今この瞬間に自分は、自分だけを見ててくれる其の人を、手放したのだから・・・
「当たり前なんだ。これは、本当は、皆持っている不安だったんだ。だから・・・・」
だから、求めない。
彼の、自己犠牲から成り立つ優しさを。
求めたりはしない。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
謝りつづける。
部屋の中には自分ひとりで、誰もいるはずがないから。
ゆがんだ声も気にせずに、泣きながら謝りつづける。
たくさんの事を
願わくば、君が心から望む其れが、君を幸せにしてくれますように・・・・
願わくば、君の選んだ道が、真に君の欲した道でありますように・・・・
大好きで
大切な
君だから
光り輝くような日々ではなくてもいいから
幸せを願うから・・・・